今夏、Piece of Syriaでは、夏休み期間中のSAKURA幼稚園の施設を利用して、小学校を中退した子どもや学習に遅れのある子どもたち(6〜9歳)を対象に、アラビア語の初級クラスを中心としたサマーコースを実施しています。
※サマーコースについての前回の記事はこちらから
このクラスには304名が事前テストに参加し、就学・再就学に向けた基礎的な言語力の育成を目的として行われました。
その中で、学習の一環として取り入れられたのが、150名の子どもたちによる地域の農園訪問活動です。これは、教育面のみならず感覚的な体験を通じて自然や農業への関心を高め、子どもたちの自己肯定感や社会参加の促進を目的としています。
農園を訪問する参加生徒たち
訪問先では、子どもたちはさまざまな植物を観察し、苗を実際に植えたり、水やりをしたり、塗り絵をしたりといった活動を行いました。活動は約3時間で、学びと遊びが融合したプログラムとして構成されています。
初めは農業や植物について全く知らなかった子どもたちも、土に触れ、苗を植え、自分の手で命を育てる体験を通じて、大きな興味と喜びを見せました。活動中には多くの質問が飛び交い、地域の農業技師に解説を依頼する場面もあり、学びへの意欲の高さがうかがえました。
この活動を通じて見られた変化として、集中力の向上や、自分の苗に誇りを持つ姿、他の子どもとの協働を楽しむ様子など、行動面・感情面ともにポジティブな反応が多く観察されました。
保護者や教員からも好評で、今後も継続・拡大していくことを望む声が寄せられています。
特に印象的だったのは、2年間学校に通っておらず、極度の人見知りだったアフマドくん(9歳)の変化です。
活動開始時には話すこともせず離れて見ていた彼が、数分後には小さなスコップを手に苗を植え、植物の名前や育て方を自ら質問し始めました。
自分が植えた苗を「妹に教えるために持ち帰りたい」と話したとき、彼の中に芽生えた誇りと責任感に、指導員一同が心を打たれました。
この短時間での行動の変化は、彼のような立場の子どもたちに対する「体験を通じた学び」 の可能性を強く示しています。
このような活動は単なる「楽しいイベント」ではなく、子どもたちの学習意欲を喚起し、環境への関心を高めると同時に、心理社会的なサポートにもつながっています。
特に、学校から離れてしまった子どもたちにとって、自分が何かを「できた」「わかった」と感じられる場の存在は、再び学びの場へ戻る大きな一歩になります。
園長先生からもこの活動の教育的・人道的意義に深い共感が寄せられ、地域全体としてこうした取り組みを広げていく意向が示されました。
今回の取り組みを通して、子どもたち一人ひとりの中に希望の種がまかれました。学びと自然、そして地域がつながる場として、今後もこのような活動を展開していければと考えています。