シリアでは小学校から大学まで授業料が無料で、初等教育の就学率は99.6%。小さな村でも小学校がありました。字の読み書きの出来ない女性が村にいたら、識字教室を開くことができ、無料で読み書き計算を学ぶことができました。大学のレベルも高く、大学も無料で4年間で数百円しか使わなかったという友人もいたほどです。
初等教育就学率
99.6%(2011年)
識字率
95%
大学授業料
無料
2011年に戦争が勃発し、一時期一部の地域では就学率が6%まで下がりました。2020年現在でも就学率は23%ほどです。字の読み書きができない子ども達が増えました。これはかつてのシリアでは信じられないことです。
シリア国内には、国際組織や支援団体からの資金が届かず、学校の維持費が足りていない地域があります先生が無償で働いてくれている状況で、収入が無いままでは、先生たちも家族のために仕事を諦めざるを得ません。先生がいなくなると、教室も運営できなくなります。
教育の機会を失った子ども達は、明日の生活のために児童労働や物乞いという選択肢に向かいます。また読み書き計算ができない子たちは、まともな職にありつけず、やがて武器を手にする可能性もあります。
僕が2008~10年に青年海外協力隊(JICAボランティア)としてシリア北部で暮らしていたころ、ある村で一人の少女と出会いました。活動地の村に住んでいた当時12歳の少女は、いつも僕の活動を手伝ってくれていました。
ある日、彼女は僕に「私の夢はね、夢を叶える子ども達を育てる学校を作ることなの。だから、今、一生懸命勉強をして、お医者さんを目指しているの」と語ってくれました。
飛び級するほどに勉強をしていた彼女が語る夢に、素直に「すごい!」と感動しました。ですが、その僕に「あなたがいたからよ」と彼女は言うのです。「他の大人達は、そんなことできっこないって言う。でも、あなただけが、私ならできるよって言ってくれたでしょ?だから私は夢を持つことができたの」と言ってくれました。
その時、僕は「夢を叶える大人でありたい。夢を追いかけていいって、子ども達に伝える大人でありたい」と決意しました。
戦時下における幼稚園・小学校の役割は大きく2つあり、1つは「子ども達の心理的ケア」、もうひとつは「基礎教育の継続」です。
戦争によってトラウマを抱えてしまったり、家の中では余裕のない親が子ども達にかまう余裕を失い、家の外は危険なために遊べない、という環境の中で、子ども達が安心して大人や友人達に心を許して、遊んだり感情を解放させられることは、心理的ケアに大きな効果があります。
また、幼稚園や学校に行っていない期間が続いて年齢を重ねると、教育の遅れから恥ずかしくて学校に戻りたがらず、退学する子ども達が出てきます。幼稚園・小学校は、教育の基礎を学ぶ場としての役割があり、将来の退学者を減らすという役割を担っています。
「戦争」という状況そのものが終わったとしても、その日からすぐに「平和」が訪れるわけでありません。10年という長い期間で破壊されたものを直し、未来を創るためには、しっかりとした土台が必要です。私たちは、それこそが教育だと考えています。
学校に行けること。家族と一緒に過ごせること。安心して「行ってきます」と言えること。そうした「当たり前」のことこそが、平和な風景だと思います。かつてシリアでは、その風景は「当たり前」でした。しかし、戦争の後に生まれてきた子ども達にとってはそうではありません。まずは幼稚園の中で、安心して学び、遊び、未来について考えるような環境を届けられたらと思います。
Piece of Syriaの目標は「シリアをまた行きたい国にすること」。
そのために、シリアの少女が描いた夢の続きをあなたと一緒届けられたらと思います。そして、彼女と同じように”夢”を持つ子どもを、一人でも多く支え、「あなたのおかげで夢が持てたよ」という言葉を、あなたと一緒に受け取っていけるような活動にしていきます。
“世界を変えるのは、いつもたった一人の想いから”皆様からご支援と共にいただく”想い”が、きっと世界を良い方向に変えていくと私は信じています。
戦争というのは、とても大きな課題です。
「どうしたらいいか分からない」と立ちすくみそうになります。
しかし、私たちが大切にしている言葉があります。
「世界を変えるのは、いつもたった一人の想いから。その一人に、あなたもなれる」
現地パートナーの想い、シリアの先生達や生徒達の想い、Piece of Syria代表の想いを応援してください。
ご支援者様お一人おひとりの想いが、力が集まる中で、きっと世界は変えられます。