シリアのピース

「シリア」ってどこだろう?~大学生が学ぶシリア地政学入門~

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皆さんは、シリアの地理や歴史についてどのくらい知っていますか?

 

■自己紹介

 

皆さま、こんにちは! Piece of Syriaボランティア として活動させて頂くことになりました、藤永凜(ふじなが りん)と申します。現在大学4回生で、国際関係学と中東政治を学んでいます。

 

特に現代シリア政治を学んでいるため、シリアのことをもっと知りたいなと思ったこと、PoSさんの掲げておられる「シリアをまた行きたい国にする」という理念に惹かれたこと、そして少しでも何か現地の人たちのお役に立てるようになりたいなと思い、ボランティアとして関わらせて頂いております。どうぞよろしくお願いします!

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■シリア、中東地域に興味を持ったきっかけ

 

中東に興味を持ち始めたのは、高校の世界史の授業でイスラーム文明を学んだ時で、教科書に載っていた美しいイスラーム建築や街並みを見て、絶対に中東に行ってみたいと思っていました。

 

こんな感じでイスラーム王朝時代に興味があったのですが、大学ではパレスチナ問題や現代の中東政治に関心がシフトしていき、中東研究のゼミを選択しました。そこで学んでいく中で、シリア政治に面白さを感じ次第にシリアのことをもっと知りたいと思うようになったことがきっかけです。

 

将来は、今まで学んできたことを踏まえて、特に中東地域で、紛争や暴力に苦しむ子どもたちのメンタルヘルスケアなどに携われるような国際機関などでお仕事をしたいと考えています。

 

■このブログの目的

 

シリアを含め中東地域ときいたら、豊かな文化やホスピタリティにあふれる人々、美味しい食べ物であったり、逆に「危険」な地域、紛争が多いといった様々なイメージを思い浮かべるかと思います。

 

そういったイメージは、真実なものもあればバイアスのかかったものも多くあり、もしかしたら間違った見方・一方的な見方にとらわれて、本当の中東像が見えてこなくなってしまう可能性もあります。

 

まだまだ私自身分からないことも多くありますが、皆さまにあらゆる方向からシリア、中東地域のことをぜひ知って頂きたいので、学んだこと等をここでシェアできればと思っております。

 

■シリアの地理と歴史的背景

 

今回は、シリアの地理や「シリア」という名前について少しお話したいと思います。シリアは、皆さまご存じの通り、中東地域にあり、周りはトルコ、イラク、レバノン、イスラエル、ヨルダンに囲まれています。

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現在は、2011年から始まった内戦の影響で同国は混乱に陥っており、なかなかシリアに足を運ぶことはできません。以前は、数多くの歴史的建造物や美しい街並みであったり、何よりも人情・治安が良いということで、観光地としてとても人気があったそうです。

 

↓ 以下内戦前の写真です!

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(商人の街として有名なアレッポ。そこにあるスーク=市場は賑やかな活気にあふれた場所です。)

 

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(首都ダマスカスに位置する、ウマイヤドモスク。世界最古のモスクといわれています。)

 

 

そもそも「シリア」ときくと、現在のシリア・アラブ共和国をみなさん思い浮かべると思います。しかし、1945年に国としてのシリアが成立する以前、そして西洋列強が中東に勢力を伸ばす以前は、現在のシリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナ/イスラエル、トルコの一部に当たる地域のことを「シャーム」(大シリア or 歴史的シリア)と地元の人々は呼んでいました。

   

この「シャーム」とは本来アラビア語で「左手にある土地」の意味で、アラビア半島の住民が東側を向いた時に、半島の北にあるシリアは左になることからこの言葉が使われていました。

この地域では基本的に共通する食文化を持っていたり、アラビア語も共通言語で、イスラーム、キリスト教、ユダヤ教も信仰されていたそうです。そのため現地に住んでいた人々の間では「シャームの地」という言葉によって、一定程度の帰属意識や一体感があったといいます。

 

 

ちなみにシリアという呼び方についてですが、旧約聖書においてこの地域の辺りがヘブライ語で「シルヨン」と呼ばれていたことから、ヨーロッパ人は「シリア」に近い発音で同地域を呼んでいました。そしてここで生活してきた現地の人々は19世紀半ば頃にこのヨーロッパ側の呼称をアラビア語に導入し、「スーリーヤ」を使用し始めたといいます。

 

当時、この「シリア」という言葉と「シャーム」という言葉は地理認識としてはほぼ同じ地域を指していたのですが、この「シリア」が使われることによって「シャーム」が兼ね備えていたアラブ性・イスラーム性などの性質は薄れ、この地域の歴史的・文化的解釈も広くおこなわれるようになったと言います。

 

 

しかし、19世紀のオスマン帝国の解体や西洋列強、特にイギリス・フランスによる同地域の分割支配、イスラエルの建国などを経て、大シリアは分割され現在のような国家群が形成されるようになりました。その影響で「シリア」という言葉の解釈が大きく変化し、「シリア」と言えば現在のシリア・アラブ共和国のみを一般的に指すようになりました。

 

ですが先も述べた通り、かつてこの「シャーム」に住んでいた人々にとっては「国」という概念がなく「シャームの地」に対して一体感を抱いていたため、西洋列強によって勝手に国境線が引かれそれぞれの国に分けられてしまったことで、イスラエル以外の国々では今も国民や民族意識の醸成がうまくいっているとは言えません。

 

このような背景から、これらの地域ではパレスチナ問題など現在も様々な問題を抱え、不安定な状況が続いています。

 

 

〈参考文献〉

松本弘『現代アラブを知るための56章』、明石書店、2013年。

末近浩太『現代シリアの国家変容とイスラーム』、ナカニシヤ出版、2005年。

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