シリアのピース

トルコ便り⑤【シリア人のID ~KIMLIKと難民キャンプ~】

アッサラームアライクム。Piece of Syriaのへむりです。

  ● 外国人登録証Kimlikとは
  ● 難民キャンプが閉鎖する理由

についてお伝えさせていただきます。

トルコ密入国、直後 ~ Kimlik取得

トルコに住むシリア人のステータスは、3つあります。
「来たばかりの人」「Kimlik」、そして「市民権」です。

2011年の戦争前までは、買い物のために国境を越えるくらい自由でしたが、
今では多くの場合、シリアからトルコに来るのは密入国です。

相場は、時期や業者(安全度)によって違うのですが、最近は一人3500$と聞きます。

壁やフェンスができており、業者はその警備のスキマを探して国境を越えさせるのですが、
見つかれば射殺されるというリスクがあります。
(トルコ軍が密入国を斡旋しているケースもあるらしいですが、定かではありません)

国境を越えた後、Kimlikという外国人登録証(Protection Card)の申請を行ないます。

「以前はそれほど重要視されていなかった」というこのKimlikが、
1~2年前から死活問題になる程に重要になっているとのことです。

Kimlikなしでは、学校に行けず、病院も保険なし、仕事もままなりません。
銀行口座や携帯電話を取ることもできないそうです。
(なので、国境を越えてすぐのところに、ヤミのSIMカードが売る人たちがいるんだとか。
 ヤミなので、数ヶ月で使えなくなることもあるそうです)

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<難民が殺到していた時期、ギリシャの島レスボス島の難民キャンプ前では携帯会社がSIMを売りに来ていた>

Kimlikとトルコの難民キャンプ閉鎖

Kimlikは申請してすぐに取れるわけではなく、数ヶ月から1年かかることも。

身内に障がいを持った人や病気の人がいた場合などは、優先して発行してくれるそうです。

Kimlikは県ごとの管理になるそうで、シリア人が特に多く流入しているトルコ南部の町では、
Kimlikを発行するイミグレーションオフィスが一時閉鎖したことも(しかも数ヶ月!)。

一度登録してしまえば、その県とIDが紐づくので、引っ越しは難しいと聞きました。

僕が訪れた、あるシリア人の家族は、トルコの難民キャンプに数年住んでいたのですが、
難民キャンプは今年から閉鎖が進んでいます。

そのため、その家族は難民キャンプから出て、自分たちの家を探さないといけないのですが、
キャンプがあった県はシリア人がほとんどいなかったそうで、
シリア人が多く住む、シャンルウルファ県にやってきたのです。

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<トルコの難民キャンプ>

しかし県が異なるので、Kimlikがまだ取得していないことも多く、様々なサービスが受けれない状況にあります。

シリア国境近くの難民キャンプの閉鎖の裏には、お金の問題だけではなく、
トルコ軍のシリア侵攻が関係している、という人もいます。

(シリア国内にトルコ軍占領地があり、そこを拡張しようとしています。参照:トルコ便り④)

キャンプのあったところに、軍が配備されており、そのためにキャンプが撤去された、
と、あるシリア人は僕に話してくれました。

 

※僕が見た限り、報道では、軍の配備とキャンプ閉鎖との関連は書いていませんでしたが、
軍の配備している場所については、キャンプのある地名(スルチ区・アクチャカレ区)と重なります。

(参考)

●【テロ掃討】 国境向かい側からの挑発に対しトルコ軍が瞬時に報復 TRT2018.11.4

●Turkey closes six Syrian refugee camps (2018.11.22)

トルコ内務省は、19あるシリア難民キャンプのうち6つを経済緊縮を理由に閉鎖した。トルコに住むシリア人は、2017年の340万人から、2018年には360万人に。トルコ政府は、トルコ軍が占領するシリア北部の安全地帯へのシリア人帰還を進める政策をしているが、実際にはトルコのシリア難民の数は増えている。トルコ南部のガズィアンティップ県、マルディン県、シャンルウルファ県の、13万2000人の住む6つの難民キャンプを閉鎖した。

内務省は、閉鎖の理由について経済の緊縮とし、キャンプに住んでいたシリア人は経済支援を使って家を借りていたと話した。3万1000人のシリア人はトルコの他のキャンプに移動した。6つのキャンプ閉鎖によって、7690万リラ(1450万ドル)が節約できたという。

<スルチ>

<アクチャカレ>

僕らは、夢の中にいる

「数ヶ月あれば、状況は変わってしまう。
 だから、僕らは帰るのは難しいんだ。まだまだリスクが高い」

と、言うと、友人は涙目になりながら、僕に語ります。

「まるで、夢の中にいるみたいだ。
 7…いや、もう8年だよ。戦争が始まってから。
 僕の故郷も、政府軍に、ダーイシュ(IS)に、クルド軍に、
 めまぐるしく支配する組織が変わり、そのたびに破壊されてきた。

 帰っても、僕の住んでいた家はもうないんだ」

 

朝起きて、家族とご飯を食べ、学校や職場に行き、
2時には仕事を終えて、家に帰って、家族とご飯を食べ、
夕方から夜にかけて、友人たちとおしゃべりしたり、親戚の家に行ったり・・・。

のんびりと、人と人とのつながりを、家族を大切に生きてきたシリアの人たちの「当たり前」。

それが再び、「当たり前」になる日がくるように、僕たちができることはあるのでしょうか。

答えは出ないままですが、今できることを少しずつ積み重ね続けたいと思います。

 

次回は、シリア人のIDの続き、「kimlik取得後」と「市民権」について、解説したいと思います。
【トルコ便り】
①【シリアはどうなるのか?】● トルコに残る人たち  ● シリアの今
②【トルコに住むシリア人の声】● 閉じ始めた難民キャンプ ● シリア人とトルコ人の中で起きた衝突
③【シリアからトルコへ。トルコからシリアへ】● 難民は負担なのか? ● トルコから去りたいシリアの人たち
④【移動ができない、という日常】● トルコのバス事情 ● シリアの中のトルコとクルド
⑤【シリア人のIDと医療と教育】● トルコに住むシリア人のID      ● 医療と教育事情

⑥【シリア人のID ~教育と医療~】● 母国語で学べない● 病院に行きたい時は

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       店名 408(ヨンゼロハチ)
       普通 4328753

 

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