Piece of Syriaは、アサド政権が崩壊し、新しい局面にあるシリアで「避難先から帰ってきた子どもたちが、シリアの学校に戻るための母国語教育」を開始します。
2011年3月にシリア危機が始まってから14年。戦争前は、無料で質の高い教育を受けることができたシリアでしたが、一時期、就学率は6%まで低下した時期・地域が出るほどの状況になりました。
2024年12月、アサド政権の崩壊という大きな転機を迎え、歓喜と安堵が広がったものの、残された課題は多岐に渡ります。14年もの戦争によって、食料・医療・水・電気などのインフラが破壊されました。経済制裁の解除も進みつつあるものの、人口の約7割に当たる約1,670万人が人道支援を必要としています。一方で、国連が必要だとする支援のうち、15%の予算しか集まっていない状況です。
独裁政権がなくなって半年以上が経った今も、シリアは「世界最大の人道危機」と言われる状態が続いています。
戦争、そして地震の影響で、約2万校ある学校のうち、40%が損壊・破壊され、学びの場が奪われています。治安や経済悪化など、様々な理由から、3人に2人の子どもたちが学校に行くことができていません。
その中で、戦争中に国外や他地域へ避難していた人々が、少しずつ故郷への帰還を始めています(2025年6月時点、政権崩壊後の6か月間でシリアへの国外からの帰還者は約60万人、国内避難民の帰還者は134万人)。この帰還によって、子どもたちを取り巻く状況が大きく変わっています。
国外で生まれ育ったシリアの子どもたちの大半は、避難先の国の言語が第一言語となり、シリアの歴史や文化を学ぶ機会もありませんでした。
トルコだけでも、70万人がトルコで生まれており、彼らはトルコ語で、トルコの教育カリキュラムを学んでおり、アラビア語の読み書きができません。
UNHCRは、2025年に国外から100万人がシリアに帰還する、と予想しています。
しかし、母国語であるアラビア語や、シリアの教育カリキュラムを学んだことがない子どもたちが、シリアの学校に戻ることは非常に困難です。
新政権は、学校の修復と運営について、積極的に進めていこうとしています。
そこで、私たちNGOの役割として、シリアに帰還した子どもたちが学校に円滑に戻ることができるようにするための支援が必要とされています。
私たちは、シリアに帰還し、再定住を目指す家庭の子どもたちに向け、アラビア語を中心とした補習校をアレッポ市内に新たに創設します。
補習校では、新学期が始まる9月から、300名の子どもが週5回通い、アラビア語を中心に3時間の授業を実施します。
補習校の運営には、先生の人件費、教科書、水道光熱費、心のケアのアクティビティなど、1人あたり月約3,000円の費用がかかります(1日あたり約100円)。
この支援は、子ども1人が学習できる環境が生み出すだけでなく、先生たちの安定的な雇用にもつながります。現在のシリアでは、先生が教師の給与だけでは生活することが厳しい状況にあります。
新政府は、給与を増やすために動いていますが、物価の高騰やインフラの不足から生活に必要なお金も増えており、教育に専念することが難しい状況も見られます。しかし、皆様からのご寄付で、補習校で働く先生たち12名に給与を安定的に届け、先生が家族を守り、教育に集中できる環境を作ることができます。それは、教育の質の向上にも繋がります。
前は文字も書けなかったけど、今は教科書も読めるし、先生の話もよくわかるようになったよ。
読み書きができるって、すごくうれしいことなんだ。
勉強って楽しいって初めて思えたし、学校に行くのが楽しみになった。
ここで過ごした時間は、僕にとって宝物です。 (アミールくん、8歳)
小さい頃はアラビア語の文字が読めませんでした。
でも、補習校で学んでから、読むことも書くことも、話すことも楽しくなり、自信がつきました。
アラビア語は私にとって、家族や祖国とつながる大切なものです。
言葉を学ぶことで、シリア人としての誇りを持てるようになったと感じています。
勉強が好きになり、将来の夢もできました。
もっと多くの子どもたちが私のような経験ができますように!(ガザール、12歳)
【7/24】Piece of Syria活動説明会|教育で平和なシリアの未来を創る 〜最新のシリア訪問から見えた「これから」の私たち〜
【日時】7月24日(木)20:00-21:30
【申込】https://syria202507.peatix.com