「何度も訪れた小学校の校庭が、処刑場になっていた」
その事実を知った時、僕は「なぜ今、行動していないんだろう」と居てもたってもいられず、何が起こっているかを知り、何かしないと!と動き出しました。それが2015年。内戦状態で不安定化するシリアの北部にISILが侵攻し、僕が2年間過ごした街を占領していたのです。
中東に飛んだものの、シリアは入れなかったので、シリア周辺国と欧州で、支援団体や難民となったシリアの方々を訪ねる現地調査を経て、2016年にPiece of Syriaを立ち上げました。
いつも関心を寄せていただき、ありがとうございます。Piece of Syria代表理事の中野貴行です。今日は、なぜ僕が団体を立ち上げ、そして、どんな未来を作りたいかをお話をさせてください。
■「あなたのおかげで夢が持てたよ」という少女
シリアは、大学時代にバックパッカーとして訪れ、その後、2008-10年に青年海外協力隊として2年間、活動をした思い出深い国です。「中東=戦争」というイメージがあったのですが、いざ訪れてみると本当に治安が良く、人が信じられないほどに親切でした。
声をかけられてお茶をご馳走され、タクシーに乗ったら目的地ではなく家に招待されてご飯を振る舞われる、バスで隣の人が「遠くから来てくれたんだから」とバス代を出してくれて、そのまま家に招待される、ということも何度もありました。
シリアの人たちは「家族との時間」を大切にしていて、夜には、近所から親戚や友人たちが訪れて、どこまでが家族なんだろう?と思うほどで、僕もそんな家族の一員のように仲良くしてもらいました。
小さな村でも学校があり、大学まで無料だったので就学率がとても高く(外務省のデータで 99.6%)、「教育レベルは高いんだ」とシリアの人たちがいつも教えてくれました。
そんなシリアで一緒に過ごした少女が、僕に「あなたのおかげで夢が持てたの」と話してくれたんです。
■子どもたちの夢を叶える学校を
「あなたの活動によって、大人たちが変わる姿を見て、動けば変わるって思えるようになったの。そして、『私が夢がある』って私が言ったら、あなたは『応援するよ!』って言ってくれるでしょ?だから夢を持つことができたんだよ」
そう彼女は教えてくれました。
「子どもたちの夢を叶える学校を作るのが夢なんだ。私の学校で育った子どもたちが、『先生みたいになりたい!』って言って、また新しい学校を作ってくれたらいいな」
そう話しながら、見せてくれた成績表は本当に優秀で、彼女が頑張ってるのが伝わってきます。
いつか、大きくなった彼女が、シリアを、いや世界を変える可能性だってある!そう思うと、僕がシリアで過ごした2年間が、世界を少し変えることができたと思えました。
そして、2015年。彼女が通っていた小学校の校庭が、処刑場になっていたことを知りました。
(2008年、平和な頃の村の小学校)
■世界を変えるのは、いつもたった1人の思いから
僕がシリアにいたのは、まだスマホやSNSも普及していない頃で、友人たちの連絡先も分からず、安否も確認できませんでした。なんとかしたい!という一心で、シリア周辺国で話を聞き続けました。
その中で「子どもたちの夢を叶える学校を作りたい」と難民という立場でありながら、自分で団体を立ち上げて奮闘するシリア人の青年と出会いました。まさに、あの少女の夢と同じでした。
また他にも多くの人が「教育支援が重要。だが足りていない」ということを話していました。だから、僕はシリア支援団体Piece of Syriaを立ち上げて、教育支援の活動を始めました。
最初は、たった1人だった活動ですが、少しずつ広がっていき、昨年度はのべ1000人以上の方からご寄付を届けていただき、シリア・トルコそれぞれで教育支援を継続しています。
■シリアを平和に。そして、皆で訪れる未来を
活動を続けていると、一つの奇跡が起きました。
「子どもたちの夢を叶える学校を作るのが夢」だと教えてくれたあの少女が住む、シリアの村の友人が、SNSで僕を見つけて連絡をしてくれたんです。そして、少女を含めて村の人たちの多くが無事であることもわかりました。
本当に言葉が出ないほど嬉しく、彼らとは今もビデオ通話で近況報告をするのですが、いつも「ここは君の村なんだぞ。いつ帰ってくるんだ?」と言われます。
まだシリアの入国は厳しいため、「まだ行けないんだ」と答えざるを得ません。しかし、いつか家族、仲間たち、そして皆さんを「僕の村」へ案内できる未来を作りたいと、心から願っています。そして「あなたのおかげで夢が持てた」と言ってくれた彼女に伝えたいと思っています。
「僕は今、子どもたちの夢を叶える学校を作ってるんだ。この夢を持てたのは、あなたのおかげだよ」と。
■パートナー会員募集キャンペーン2024実施中
NPO法人化から3周年となる今年、より多くのシリアの子どもたちにより良い教育を届けるために、そして、平和な未来づくりをさらに一歩進めるために、継続的に私たちの活動を応援いただく仲間を募集するキャンペーンを開始しました。
「どうやって平和をつくるのか?」という問いに、正解はありません。ですが、平和に向けた希望の種を育むことを、この活動を通じてできることは、子どもたちの姿を見ていると確信できます。
私たち、一人ひとりの力は決して大きなものではありません。ですが、パズルのピースのように力を合わせていくことで、平和を実現できる大きな力になっていく…そう信じて、「Piece of Syria」という団体名にしました。
シリアだけでなく、ウクライナ、ガザなど世界中で戦争が続く報道を見ていると、「平和をつくる」という言葉を使うことも躊躇したくなります。それでも、僕らは平和を諦めていません。新しい仲間を探しながら、新しい取り組みにも挑戦し続けています。
子どもたちの夢を応援し、平和な未来が築かれたシリアに皆で訪れる…その未来が実現できたとき、世界に希望が届けられるはず。パートナー会員として、この挑戦を継続的に応援し、平和を作る仲間になっていただけませんか?
皆様のご支援、どうぞよろしくお願いいたします。