活動報告

【イベントレポート&感想】中東で何が起きてる?揺れ動くパレスチナ情勢が変えるシリアのこれから

こんにちは。スタッフの鈴木です。

 

10月18日に緊急開催した、「中東で何が起きてる?揺れ動くパレスチナ情勢が変えるシリアのこれから」には、多くのご関心ある方にご参加いただき、盛況のうち終了しました。ありがとうございました。

<動画でご視聴する際はこちらから↓>

  

 

今回のイベントを開催するきっかけは、パレスチナ情勢が緊迫する状況の中で、シリアもイスラエルから攻撃を受けるなど影響を受けているのにも関わらず、「シリアについて言及されないのはなぜだろう?」という想いからでした。

 

私自身も非常に勉強になった、充実したお話でしたので、今日は中でも印象的だったお話をかいつまんで、ご紹介していきたいと思います。

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【登壇者】
青山 弘之 氏(東京外国語大学教授)
専門は現代東アラブ政治、思想、歴史。ダマスカス・フランス・アラブ研究所(現フランス中東研究所)共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員などを経て現職。『シリア情勢』(岩波書店、2017年)、『膠着するシリア』(東京外国語大学出版会、2021年)、『ロシアとシリア』(岩波書店、2022年)などがある。
ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」を運営:http://syriaarabspring.info/

シリアにとっての「パレスチナ」

まずは、シリアにとっての「パレスチナ」とはどのような存在なのでしょうか?

 

そもそも、「シリア」という言葉を使うとき、二つの「シリア」があることを念頭に置く必要があります。

一つは、いま私たちが世界地図で見ている「シリア・アラブ共和国」。

そしてもう一つが、「歴史的シリア」あるいは「大シリア」とも呼ばれる、現在のシリア・アラブ共和国、レバノン、ヨルダン、そしてパレスチナ、イスラエルを含む東地中海地域の歴史的な呼び方です。

 

オスマン帝国の時代まで、シリアとパレスチナは一つの同じ国でした。

それゆえ、今でもシリアにとってパレスチナは、「失われたシリアの一つ」「分断されたアラブ祖国の一部」というような見方をしています。

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赤く囲まれた地域が「歴史的シリア」。エルサレムもここに入っていることが分かります。

「パレスチナ問題」を語るときに持つべき視点

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そもそも、いわゆる「パレスチナ問題」を、「パレスチナとイスラエルの対立」「アラブ人とユダヤ人の対立」として捉えるのは、問題の本質や歴史的経緯を無視した非常に「近視眼的な」物の見方だと、青山先生は表現されました。

 

考慮しなければならないのは、ヨーロッパにおける「反ユダヤ主義」の長い歴史。

イスラエル建国までの歴史をここで語るのは、ここでは省略しますが、「パレスチナ問題」を考える時に中東地域だけに目を向ける(あるいは、向けようとする)のは、西側諸国による責任転嫁です。

 

その文脈で話せば、シリアもパレスチナも、英仏によって分割された、同じ被害者。シリアもまた、「パレスチナ問題」の被害者であると言えるという事です。

 

パレスチナ情勢によるシリアの「これから」

シリアとハマースは、「抵抗枢軸」におけるパートナー的存在でした。

「抵抗枢軸」とは、ハマース、シリアで活動するパレスチナ諸派、ヒズブッラー、イランなどを含めた武装組織のネットワークを指します。

 

つまり、今回のハマースとイスラエルの衝突から、パレスチナ情勢の行く先を考える時に、シリアもまた大きな影響を受けることは間違いないということ。

 

今回、イスラエルは、ハマースが大きな痛手を負うまで徹底的に報復することは目に見えています。ハマースがそれで影響力を失うことによって、周辺諸国が介入し、中東地域全体の情勢が悪化することが懸念されます。

 

今、イスラエルの侵攻に反対するのは、感情的に見ればもちろん、「ガザの人びとが日々命を落としている」現状があるからです。

しかし、あえて政治的に冷徹な見方をすると、イスラエルの侵攻に反対しないと、シリアやヒズブッラーといった抵抗枢軸の仲間がこれにリアクションする危険があります。

そして、国際法違反の武力行為を許容すれば、世界の他の地域でも、「こういうことをしてもいいんだ」と、負の影響をもたらす引き金になりかねません。

 

怒りや憎しみに身を任せると、自制を呼びかけることができない状況になるのが非常に危険です。

 

 

「わたしたちは、どう情報を取捨選択したらいいですか?」

「わたしたちは、どう情報を取捨選択したらいいですか?」という旨の質問を多くいただきましたが、
 

「取捨選択というより、解釈の仕方が大事。起きたことに対して、怒りや憎しみがともなう解釈はやめた方がいい。
大切なのは、冷静に情報を租借し、自分が一当事者にならないこと」

 

だと青山先生からご回答いただきました。

参加された方からのご感想

参加して下さった皆さまからのご感想を、いくつか抜粋してご紹介します。

ここでは紹介しきれないほどたくさんの感想をいただきました。皆さま、ありがとうございました!

 

「シリアの複雑さ、知らなかったことが多すぎて苦しくなりました 怒りの対応をしないということが印象に残りました。また支援し続ける、忘れないようにすることは大切ですね。日本の東北支援もそうですがブームで終わらせずに関心を持ち続けることの責任を感じます。」

 

「今回の戦争で怒りを持つべきではない、その言葉に目が覚めた思いです。 悲しみは決して消えることはありませんが、青山先生がおっしゃったように冷静な視点をもち情報を取得することが大事だと気付きました。 」

 

「シリアの分裂状態である現状を詳しく解説していただきわかりやすかったです。また最後に話されていた、ニュースを怒りや憎しみを持って解釈すると当事者になってしまい、冷静な判断ができなくなるということや、メディアで報道されなくなっても関心を持ち続けることが重要ということは、複雑な中東を理解し支援していく上でとても大切な姿勢だと感じました。」

 

「イギリスの委任統治の際に、アラブ人は、パレスチナではなく南シリアという名目を主張したという話をどこかで聞いたことがあり、青山先生の地図の説明で腑に落ちました。」

 

Piece of Syriaはこれからも、シリアや地域全体への歴史的視座を大切にしながら、戦争や平和について考えるきっかけを創っていきたいと思っています。

 

 

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