皆さんこんにちは。Peace of Syria ボランティアの鈴木雅枝です。
3/9(日)に東京で開催された「中東を語ろう!私たちがハマった中東文化 〜文化を通して考える平和と未来〜」をレポートします。
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今回のイベントでは、代表・中野と佐藤 真紀氏が登壇。
お二人の発表・対談、質疑応答の後は、ワークショップを行い、参加者と一緒に「平和のために私たちができること」を考えました。
代表の中野からは、「僕がハマったシリアの文化と文化遺産の現状、シリア支援の今」と題し、青年海外協力隊やバックパッカーで体験した自身のシリアでの体験や文化的側面、そして今まさにアサド政権から新政権に移ろうとしているシリアの現状と支援の状況について話していただきました。
その後、中東地域の支援に携わってこられ、シリアやパレスチナの支援活動をされている、国際協力アドバイザーの佐藤真紀さんから、「愉快なメソポタミア文明と現代社会」としてメソポタミア文明と現代社会のつながりを、ビールなど身近なものとの関わりから切り開いて頂きました。
シリアはかつて住みやすい国で、犯罪率も低く、代表である中野の体験としては、落としものをしても全部戻ってくるほど、平和な国という印象でした。
また、シリアで有名な文化遺産であるパルミラは、かつてオアシスに接した住民が暮らす街として栄え、その都市遺跡が今でも残っています。
(2005年と2008〜10年に何度もパルミラに訪れた中野)
残念ながら、2011年頃からの内戦により状況は大きく変わってしまいました。文化遺産の破壊は、個人にとって大切な心の拠り所であることも多いので、物質的な消失だけでなく、人々の心にも傷や消失感として残ります(赤十字国際委員会「文化財、文化遺産に対する攻撃」より)。
そのため、戦争中にターゲットになりやすい現状もあります。
こんなにも美しく平和な国があった。
中東を知る中で、テロ、紛争、怖いイメージが先行する中、こんなきれいなイメージだったら、行きたい国と思ってもらえるのかな。と個人的に考えたりもしました。
さて、続いて、佐藤真紀さんからは、古代メソポタミアへのリスペクトを交えて、私たちにつながることをたくさん紹介していただきました。
「文字の発明をありがとう」
楔型文字は人類最古の文字といわれています。文字を粘土に書いて残してくれたことは他ならぬ文明開化で、現代の生活には欠かせないものです。最初は絵文字として使われ、次第に記録や法律、文学など多様に活用され、文明の発展に大きく寄与しました。
「ビールの発見をありがとう」
メソポタミアでは紀元前4000年頃からビールが製造されていたことは、この地域の考古学的な発掘により多数のビールに関連する道具が物語っていると言われます。
偶然にも小麦で作ったパンに水を入れて放置していたら発酵していたことが始まりだとか。現代のクラフトビールの台頭に至るまで、ビールの歴史をたどると一筋縄では行かないほどのボリュームですが、探求してみることでリスペクトが高まるかもしれません。
佐藤氏が作成したメソポタミア文明の紙芝居の絵
ここまで、中東での現代まで引き継がれた文化を学んできたことを踏まえて、「私たちができること」を4人一組のワークショップ形式で考えました。
・文化を知ること
・文化を継承すること
・お互いの文化を知ること
こんなキーワードが話し合いの中ででてきましたが、”文化”を守ることは、平和構築へのきっかけになるかもしれません。内戦に参加したのは、 そこが良い条件のリクルート先だったから、という現実もあり、生きるために意図せず武装勢力の一員になってしまっていることもあります。
お互いの文化を理解することや 、内戦に参加するなどの境遇になってしまった事実と向き合 うことで、内戦に参加しなくても生きていける方法を模索することができる、と感じました。
例えば、地域の人たちと地域のお祭りに参加する。近所の祭りでも、地域の人の顔を見て、その人たちと何かを一緒にすることで文化を守るというきっかけで、お互いを知り理解することで、自然と社会的結束力が高まることもあります。
こう考えると自分にできることは身近にあり、些細な日常の交流が、平和への一端を担うかもしれません。
● メソポタミア文化と聞いて、あまりぴんとこなかったですが、いろいろ紹介していただいて興味が沸きました!真紀さんが描いた絵も素敵ですし、いつか紙芝居拝見したいです!
● 中東のことを全然知らないことに気づかされました。豊かな歴史や伝統が内戦によって失われかけていること。そこから復興しようとしていること。またそれを遠い日本から応援している人がたくさんおられること。善悪では片付けられないことを事実をまずは勉強しようと思いました。
● ゲストの佐藤真紀さんのトークのなかで「メソポタミアへのリスペクト」というお話しが出てきて、メソポタミア文明のことを改めて思い出し、考えさせられました。
中東という地域やシリアやトルコなどの国の名前はよく出てきますが、メソポタミアという言葉は、世界史の授業で学んで以降は長く意識していませんでした。しかし、佐藤先生のお話しを聞いて、文字をはじめ様々な文化がメソポタミアの地から生まれ、それらが現代に繋がっていることを思い起こし、改めてメソポタミア文明の偉大さに気づかされ、「リスペクト」という言葉に実感が湧いてきました。そして、シリアの地がまさにその文明の中核を担っていたことにも気づき、ますますシリアに行ってみたくなりました。
今まさに、複雑な政治状況のなかで混乱しながらも新しい政権の安定を模索している状況にあるシリアですが、国際社会も関与してうまく混乱が解決されれば、そう遠くない日に再びシリアに平和が戻り、安心してシリアに行ける日が来るかも知れないという期待もあります。そんななかで自分に出来ることは限られているかも知れませんが、シリアに行ける日が一日でも早くくることを願い、まずは Piece of Syria の活動の応援を通じてシリアと関わりながら、シリアの文化も学んでその日に備えたいという気持ちになりました。
(ボランティア 中村 滋さん)