アッサラーム・アライクム!Piece of Syriaの中野貴行です。今日は、前回の「仲間集めへの挑戦」に続き、私たちの活動の一つ「心のケア」の活動についてお伝えいたします。
教育支援をしている私たちが、なぜ「心のケア」の実施と継続に挑戦するのか、活動に込めた想いをぜひご一読ください!
■2023年末、心のケアセンターを設立
2023年末、シリア北部で運営する幼稚園がある地域で「心のケアセンター」の運営が始まりました。
センターでは「心理社会的ケアセッション」「保護者向けワークショップ」「教員向けの研修」を実施しており、1年間で、10校の学校にいる100人の教師、1000人の生徒を対象としています。
心理的なカウンセリングやリハビリに加え、子どもたちへの接し方を必要とする学校の先生・保護者の方々に向けた専門的なプログラムの提供なども行なっています。
経験のある専門家1名と2名の専門性を持つアシスタントの3名体制で運営され、現地の大学に認定されたプログラムになります。
(ワークショップの風景)
■心の安定をさらに奪った”大地震”
2023年2月、シリア北部を大地震が襲いました。
私たちの活動地域は、国内避難民が多く住む地域です。長引く戦争によって経済的にも不安定で、希望を持つことも難しい日々を送っていました。その中で起きた地震が、彼らの心に与えた影響は、想像さえできません。
私たちは、クラウドファンディングなどを通じて皆さんから1,200万円を超えるご寄付を届けていただいたことで、800以上の世帯に緊急地震支援を実施し、4万人以上に教育の機会の維持、そして2校の学校の修復を行うことができました。(現在、3校目の校舎を修復中です)
この活動は大きな希望、そして勇気になったのは間違いなく、改めて、ご支援してくださった皆様に本当に感謝しております。
(幼稚園と小学校を併設した建物の工事風景)
そして戦争に加え、地震で被災したシリアにおいて、「心のケア」が今まで以上に重要です。地震直後も、私たちの幼稚園では「心のケアのためのアクティビティ」が行われました。
大人にとっても戸惑うような被災のあと、安全な場所で行われたアクティビティで子どもたちが笑っている姿を見て、涙を流して喜んだ保護者の方もいらっしゃいました。
■心のケアと教育の関係は?
教育支援と心のケアは密接に関わっています。なぜなら、心が不安定な状況では、勉強に集中できないからです。また、学校が空爆などで被害を受けると「学校=怖い場所」と考えるようになり、学校に行くことを恐れてしまうことも起こりえます。
戦時下のため、100%の安全の保証はできませんが、安全で安心感を得られる場所があることが重要です。実際、地震直後、子どもたちが「幼稚園に行こうよ。あそこは安全だよ」と親に伝えたというエピソードもありました。
先生や保護者といった大人たちも、長引く戦争と被災の中で子どもたちに心を配る余裕を持つことが難しいなか、幼稚園や学校がそういう役割を果たす、ということを今までやってきたことでした。
(幼稚園・学校という場が、子どもたちが安心感を得られる場所になっています)
■だからこそ、失ってはいけない「心のケアセンター」
そして、昨年末から始まった「心のケアセンター」は個人向けの心理的サポートやカウンセリングはもちろん、大人たちが子どもたちに心を配れるようにするセッションを届け、コミュニティ全体で心のケアができる環境を作っていくことを目指しています。
2024年3月までの報告では、1,675名がセッションの受講や個別相談を受けています(男性教師120名、女性教師80名、保護者235名、男子大学生18名、女子大学生17名、男子生徒480名、女子生徒 725名)。
2024年1月に実施したワークショップは、経験した痛みを身体で表現するものでした。地震で家族や友達が亡くなった様子を表現した参加者もいました。それを受け止めることは簡単なことではありませんが、ワークショップの参加者から「地震で破壊されたシリアを再建し、庭や遊び場のある美しい家を建てられる技術者になりたい。だから勉強を頑張りたい」という感想が出てきたと言います。
このように、戦争と地震で傷ついた人々・子どもたちが前を生きていくために、彼らの心を守る存在がこれからも必要であり、教育支援を実施する私たちが「心のケアセンター」を運営することは、シリアの未来をつくっていくためにとても大きな役割を果たすと信じています。
■皆さんの支援でセンターの継続を応援しませんか?
地震後の直後は、世界中から支援が集まるのですが「継続的に支援を続ける団体」は決して多くありません。現地スタッフからは「地震前よりも課題は多くなったが、活動する団体や予算は地震前より増えているわけではない。物価の高騰もあり、今が戦争が始まってから最も過酷と言えるほどかもしれない」という声さえありました。
その中で、心のケアセンターはしっかりと大切な成果を生み出しています。
しかしながら、単発のご支援と助成金によって始めることができたため、2025年以降の予算はまだ不透明な状況です。
前回のお知らせでお伝えしたように、継続的なご支援を届けていただいたおかげでトルコの補習校の継続性が生まれました。ぜひ、心のケアセンターもぜひ、皆様とともに継続できれば幸いです!
「地震で破壊されたシリアを再建し、庭や遊び場のある美しい家を建てられる技術者になりたい」といった目標を持つシリアの次世代が、希望を持って学べる環境を一緒に届けていただけませんか?
月々3000円のご寄付で、10人が心のケアセンターで心のケアを受けることができます。
ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。