2024年12月の政権崩壊以降、シリアでは人の移動や支援ニーズ、治安状況が大きく変化しています。
帰還の動きが進む一方で、国内では依然として大規模な人道危機が続いています。
WHO(世界保健機関)が2026年5月に公表した「Public Health Situation Analysis(PHSA)」では、現在のシリアにおける公衆衛生や人道状況について分析が行われています。
WHOによると、2024年末以降、周辺国から約160万人のシリア難民が帰還しました。
さらに、4月19日時点でレバノンからシリアへ約30万人(大半はシリア国籍)が新たに越境しており、彼らへの食料や住居の支援が急務となっています。
また、国内避難民(IDPs)のうち約188万人(2024年12月から2026年4月9日時点)も出身地へ戻ったと推定されています。
一方で、現在も約554万人が国内避難民として生活しています。
UNHCRの調査では、近隣国に滞在する難民の18%が「今後1年以内に帰還したい」と回答しています。
これは2024年の2〜3%から大幅に増加した一方で、2025年1月時点の27%からは低下しています。
帰還の障壁として、
などが挙げられています。

▲シリア東部の都市デリゾール、教育インフラの多くが破壊されました
現在、シリアでは約1300万人近くが医療支援を必要としているとされています。
また、1200万人が安全な水へのアクセスを必要とし、1300万人以上が食料支援を必要としています。
WHOは、医療サービス提供上の課題として、
などを指摘しています。
さらに、シリアの従来の「病院中心・治療重視」の医療モデルが、現在の保健ニーズに十分対応できていないと分析されています。

▲現地では、「家は残っている。でも、水が足りない」「畑に戻りたい。でも、農業を再開できない」との声も
最近では、5県にわたる洪水によって2万人以上が被災しました。3500以上の避難施設が損壊または破壊され、農業にも被害が及んでいます。
特に数千ヘクタールの小麦作物が影響を受けていると報告されています。
WHOは、パレスチナ、レバノン、イランを含む地域情勢が、シリア国内の状況にも影響を及ぼしていると指摘しています。
イランとアメリカ・イスラエル間の停戦は維持されているものの、地域の緊張は依然として高く、重要な供給ルートへの影響が懸念されています。
WHOは、2024年12月以降のシリアについて、「複雑で変化し続ける人口移動の状況」に直面していると分析しています。
帰還の動きが進む一方で、
など、多くの分野で依然として大規模な支援ニーズが存在しています。
シリア情勢は現在も流動的であり、治安や地域情勢の変化が、人々の生活や帰還状況に大きく影響しています。
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出典:WHO「Public Health Situation Analysis (PHSA) - Syrian Arab Republic」(2026年5月4日、ReliefWeb掲載)
シリアでは今も、多くの人々が「普通の生活」を取り戻そうとしています。
Piece of Syriaは、そうした人々の日常や声を伝え続けていきます。