2024年12月17日、活動報告会をオンラインで実施しました。
月次で定期的に実施している活動報告会ですが、今回はアサド政権崩壊後初めての開催タイミングで、激動するシリアの最新の状況をお伝えしたく、急遽シリア人スタッフのアナスが登壇しました。
本記事では、活動報告会の様子を抜粋してお伝えしていきます。
アナスは、2016年よりPiece of Syriaとともにアレッポ郊外で教育支援を実施している提携団体のスタッフです。シリアで生まれ、アレッポ大学で学び、戦争が開始してからは隣国シリアに逃れました。
自らが難民として暮らしながらもシリア国内への教育支援を続けています。
この数日間で大きく変化したシリアの政治情勢。
アナスから、現在のシリアの人々の状況について報告がありました。
大部分は喜びの声が聴かれる一方で、先行きの見えない急激な変化に不安を感じている人も多いとのことです。
これまで供給が不安定だった、電気、水、インターネット等のインフラは、少しずつ修復がなされ以前よりは安定して供給されているそうです。
ただ、急激な発展のためインフレが激しく、食糧の入手が困難な地域があったりと、依然として不安定な状況は続いています。
政権崩壊に喜ぶ人の声は大きくメディアで報じられますが、現在のシリアはまだ人道支援が必要な状況にあることを、国際社会は知ってほしい、と訴えていました。
現在、トルコ・シリア国境では、多くのシリア人が帰還する姿を見ることができるそうです。
しかし、まだ帰還については様子を見計らっている人が多く、学期が切り替わるタイミングである2025年6月くらいから、さらに多くのシリア人が各国から帰還する動きが出てくると予測されるとのことです。
11月の空爆後、休園していた幼稚園でしたが、12/15(日)から再開しました
Piece of Syriaは、約340名の子どもたちが授業料無料で通うことができる「SAKURA幼稚園」をアレッポ郊外で運営しています。
シリア北西部では、小学校の退学率が55%といわれる中で、基礎教育と心のケアに注力しているSAKURA幼稚園の卒園生に関しては、9割の子どもたちが退学することなく小学校に通い続けているという成果を出しています。
不安定な状況の中で、シリアの人々は常に「安全で平和で幸せな場所」を求めています。
幼稚園がまさにそういった場所であると、保護者から声をいただいています。
今回のアサド政権の崩壊を受けての変化はあったか?と尋ねると「これで砲撃の危険がなくなって、安全な状態になった」という喜びの声がありました。
また、幼稚園のあるアレッポ郊外の反体制派エリアは、「国内避難民」という、戦争の中で他の地域から避難してきた人たちが多く住む地域です。そのため、アサド政権崩壊後は、幼稚園に通う生徒の家族の中には、地元が解放されて帰還した人たちもいました。ですが、生徒のうち10%程度で、今も300人以上が通っているとのことです。
SAKURA幼稚園の様子
トルコでは難民として暮らすシリア人の子どもたちに対して、補講を行う「補習校」を運営しています。
当初は、トルコ語の授業についていけないシリア人の子どもたちのために、トルコ語の授業を実施するのが主でしたが、この数年間でトルコに生まれ育った子どもたちが増えているため、状況は変わってきました。
現在は、トルコに生まれシリアを知らず、アラビア語の読み書きができないシリア人の子どもたちが増えています。
変化するニーズに対応して、補習校では、アラビア語の補習や、シリアの歴史文化を学ぶ授業を実施しています。
政権が変わり、今後トルコだけでなくヨーロッパなどの他国で育った子どもたちがシリアに帰還するケースが増えていくことが予想される中、シリア国内でも補習校の役割が期待される、とアナスは話します。
補習校でアラビア語を学ぶ様子
最後に、参加者の方から寄せられたご質問と、アナスによる回答をご紹介します。
●シリアにはなぜ「おもてなし文化」があるのですか?
シリアの人々は、昔から常に異なる文化に関心があります。外から来たゲストをもてなすことで、ゲストから文化を学ぶことが出来ます。
伝統的にそのように客人をもてなすことが、何代にもわたって受け継がれてきたから、自分たちもそうするのだと思う。
(筆者の所感:シリアは古代より文明の交差点で、東西より様々な旅人や隊商が訪れ、文化が混ざりあってきたから、そのような感覚が残っているのかな~と想像しました)
●心理サポートをシリアの人々が受ける上での課題はありますか?
例えば、女性や子ども、民族的・宗教的少数派の方々が一般よりそういったサポートへのアクセスが限られるといったことはないでしょうか?
(アナスの関わる団体では)特に難しさはありません。分け隔てなく、皆市民として受け入れています。実際、心のケアセンターには女性、子どもはもちろんクルド系など様々な人がカウンセリングを受けています。カウンセリングは、シリアでは一般的に普及している手法です。
●多くの難民が帰還してくるというお話でしたが、その難民に対し政府や民間セクターが行なっていること、行なう予定があること等はありますか?
あります。例えばトルコ政府は、既にシリアへ戻るための無料バスの運行や、国境を越えるためのサポートを行っています。
●子どもたちや女性たちが今、最も必要しているのはどのような支援ですか?
子どもたちは、心理サポートと教育が最重要です。現在私の団体では10校ほど運営していますが、これからも増やしていきたいです。
女性へは、継続的な啓発が必要です。田舎では、家庭に入って働かない女性もまだ多いですが、これからは女性が労働市場で活躍することが重要になってきます。プログラミングといったオンラインの仕事や英語など、スキルを身に着けて活躍の場を創っていくことが重要だと思います。
●アナスは、どのような未来をPiece of Syriaと作っていきたいですか?
一つ目は、教育支援を拡大させていくことです。
日本の皆さんは、本当に教育に関心を持ってくださっています。
さきほど申し上げたように、幼稚園の数をシリア全土に増やし、シリアの教育の質を底上げしていきたいです。
二つ目は、大学生向けの研修コースを創っていきたいです。将来、シリアのコミュニティーを統合していくリーダーとなる人材を育てていきたいです。
厳しいシリアの状況について、ぜひこれからも関心を持ち続けてほしいです。
シリアの戦争が終わりを迎え、これまで北西部でしかできなかった活動を、シリア全土に拡げることができます。ぜひ協力してほしいです。
そしていつか、素敵なシリアに皆さんをお迎えしたいと思います。
シリアについては、今も色々な誤解があると思っています。少しでも気になることがあれば、ぜひPiece of Syriaまでお問い合わせを!
最後に、参加者の皆さんと写真撮影
N.Kさん
「教育が大事、ということに心から同意する。最後の、特に女性にとってプログラミングスキルの教育は重要、というお話は印象的だった。自分も高齢ながら現役のソフト技術者であり、何か役に立てることはないだろうか、と改めて考えさせられた。」
T.Kさん
「シリアの未来を担う子どもたちへの教育支援の重要性と民族・宗教が異なっていても「私たちはシリア市民」との強い思いが聞けて良かった。」
最後になりますが、現在、For Goodさんで「学校に戻るための心のケア」のための緊急支援のクラウドファンディングを実施中です!
今回の動乱の中で、多くの子どもたちがメンタルヘルスを必要としており、子どもたちが円滑に学校教育に戻るためにも、迅速な心のケアが重要です。
これまでも、戦争だけでなく大地震の影響も受け、子どもも大人も心に傷を負っています。
そうでなくても、大半なシリア人は経済的な不安、治安の不安などによってメンタルヘルスを必要としてきました。
政権が変わり、これからシリアの人々が前に進んでいく今だからこそ、心のケアは非常に重要な局面にあります。
ぜひご協力の程よろしくお願いいたします。
【日時】 2月28日(金)まで
【詳細】 https://for-good.net/project/1001504
【目標】100万円
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