ラマダン・カリーム!Piece of Syriaの中野貴行です。
2024年3月11日頃、今年の「ラマダン」が始まりました。
ムスリム(イスラム教徒)にとって神聖な1か月です。
あれ?違う時期にやってなかった?
断食するのって大変じゃないの?辛そう!
そんな疑問にお答えする記事をお届けします。
ちなみに、シリアで2年間、生活をしていた際に「一番好きな月は?」と聞いて、
「ラマダンだよ!」と皆が言っていたのがすごく印象的でした!
ラマダンというのは「月」の名前です。
イスラム教は、「ヒジュラ暦」という「月の満ち欠け」を基準にした太陰暦を用いており(普通に西暦も併用して使っています)、「9月」に当たるのが「ラマダン」です。
月の満ち欠けに合わせるため、毎年10〜12日ずつズレるんですね!
(そして、新月の確認具合によって、ラマダンの開始や終了が国によって異なったりもします!)
そして、ラマダンは月の名前なので、「断食をしている」=「ラマダンをしている」という表現にはなりません。
また、「断食」と言っても「1ヶ月の間、飲み食いをしない」ということでもないのです。
断食をするのは、日の出から日没までの間で、1ヶ月まるまるということではないので、ご安心を。
そして「断食」と表現されることは多いのですが、実は飲食だけでないのです。
性行為、ケンカ、他人の悪口などを慎しまなければならない、とされています。
そのため、断食というよりは「斎戒:欲を戒める。アラビア語でスウム(صوم)」という方がしっくりきます。
(待ち遠しい日没)
僕がシリアの村の家族と共に過ごしたラマダンの様子をお伝えします。
(全てのイスラムの方々、シリアの方々が同じように過ごしている、というわけではないです!)
日の出2時間前くらいに(寝ぼけてたのでうろ覚えですが)、ちんどん屋のような太鼓の音が聞こえてきました。
その音で目が覚めたので、リビングの方に向かったのですが、日が昇ってしまうとスウムが始まってしまうので、「起きてご飯を食べるんだよー」と教えてくれる音だったそうです。
夜明け前に食べるご飯は「スフール」と呼ばれ、日没までに備えて、しっかりと飲食をします。
眠い目をこすりながら、スフールを食べると、もう一眠りをしました。
ダマスカスではラマダーン開始の前日に大砲21発、スフールを知らせるのも(太鼓叩きもいます)、日没を知らせるのももちろん大砲ですが、その話を他の都市に留学した人に当然のように言って笑われたことがあります。
— 柳谷あゆみ (@aymyngy) May 5, 2019
ほら見ろほら見ろ、サラエボだって大砲で知らせているんだぞ!(←何を勝ち誇る) https://t.co/cQJDNo10zo
改めて起きると、いつもより遅い始業時間で、お父さんは仕事に向かいました。
日中も、皆がちょっとゆっくりと動いている感じがします。
昼過ぎにはほとんど仕事にならない状態だったりするのですが、それを見て
「ラマダンで、大変な時こそ、働かなきゃ!」とムスリマのお医者さんは怒っていたので、
「ラマダンだから仕事にならない」というのは本来の様子ではなさそうです。
夕暮れ頃、一家のお父さんから「散歩に行こう」と声をかけられ、畑に向かいました。
夏のラマダンでしたが、夕暮れ頃になると湿気のないので、風がとても気持ちいいです。
散歩の目的は、日没までの気を紛らわしたかったようで、
「そろそろ日が暮れるな。そろそろ家に帰ってイフタールだ!」と嬉しそうな笑顔で言いました。(イフタールは、日中の断食を終えて最初に食べる食事)
家に戻ると、お母さんと娘さん達が準備してくれたイフタールの料理がずらっと並んでいました。日没を告げる空砲の音が聞こえると、「さぁ、水から飲むんだ」と、コップを回し飲みをし、食事の時間です。
その年、夏のラマダンだったせいか、日中よりも涼しく過ごしやすい夜の時間の方が人々は活発で、近所の人が来たり、近所に遊びに行ったり、夜遅くまで交流たっぷりに過ごします。
僕は小さな街に住んでいましたが、それでも夜11時頃に子連れでアパレルの店でショッピングしてました。
正月や夏祭りが30日続くみたいな感じです。
「世界中には十分に食事がとれない貧しい人もいれば、お金持ちもいる。
でも、この日中の期間だけは、全ての人が平等に空腹を感じている。
そして、日没後のイフタールでは、皆で食事を分け合い、飲食できる喜びを分かち合うんだ」
と、スウムを通じて感じられることに誇りを感じていて、共同体意識も相まって、「ラマダンが好き」と話す彼らの気持ちを一部ながら感じることができました。
(皆で食事を分かち合うのもイフタールの特徴)
イスラム教には、生前の行いによって「天国」と「地獄」に分けられる、という考え方があります。
(ただし、死後すぐではなく、終末の日に死者が復活し、最後の審判を経て天国か地獄かが決まる)
生前の善行と悪行のポイントで天秤がかけられるのですが、クルアーン(イスラム教の聖書)では、地獄の怖さがずっしりと語られるので、なんとか善行を重ねて天国に行きたい!という気持ちになります。
(協力隊時代に読んで、参考になった本:「コーランを知っていますか」(阿刀田 高、2005年))
善行には、神、天使、啓典、預言者、来世(終末)、神の予定という六つを信仰し、下記の五つの行為を行なうことだとされています(六信五行)。
1) 信仰の告白/シャハーダ(神を信じることを声に出す)
2) 礼拝/サラート(1日5回お祈りをする)
3) 喜捨/ザカート(富める者は貧しい者に与える)
4) 斎戒/サウム(イスラム暦9月の1ヶ月間日中の飲食を断つ)
5) 巡礼/ハッジ(一生に一度は聖地へ行く)
「ラマダンの時期に行なう善行は、普段より報いがある」とされています(善行が評価されて、より天国に近づける)。
なので、ラマダン月は、礼拝が普段より長い時間をかけて行われたり、礼拝も皆で一斉にした方がより良いとされるので、いつも以上に熱心にモスクに行って皆で礼拝を行なっていました。
僕はイスラム教徒に改宗したわけではないのですが、彼らと過ごす時は断食をするようにしていました。(「サウムしてるのか?」と聞かれることが多く、その時に嘘は吐きたくなかったので…)
ですが、家庭訪問して話を聞いていると、なんとご飯を準備してくれたのです。
「僕もサウムしているんだよ」と言ったんですが、お客さんはおもてなしをしないと!と、彼らは誰も食べないにも関わらず、僕のご飯をしっかりと準備してくれて、ここまで準備してもらったのに食べないわけにはいかない・・・となり、ご飯をいただきました。
僕が居た2008、9年のシリアのラマダンでは、日中レストランも開いていて、子ども達は食べたりもしていました。
ですが、UAEで駐在をしていた時は、日中のレストランは閉まっていることが多く、開いていても外から食事していることが見えないようになっていましたので、国ごとに違いがあるなぁと思います。
ただ、ラマダン時期にイスラム教が多い国を訪問する際には、人前で飲食をしないようにする、というのはマナーとして大事だと思います!・・・と断食を経験した僕から伝えさせてください。
(ラマダン時期に登場する「ターマルヒンディー」「スースー」というジュース)
今年のラマダンではSAKURA幼稚園の子ども達が、断食明けに食べるイフタールと呼ばれる食事をおすそ分けしていました!
シリアの子ども達が安全で豊かな環境で、教育を受けるために、そして、お裾分けができるような活動をするために、皆さんお一人お一人のご寄付が大きな力になってます!
是非、力を貸してください!