2月6日未明に発生したトルコ/シリア大地震を受けて、9日夜、オンライン企画「大地震のトルコで、シリアで 何が起こったか、今なにができるか?」を緊急開催しました。
Piece of Syriaは、ガズィアンテップ(トルコ)とアレッポ(シリア)の両国で教育支援を行っています。今回の地震でその両事業地が被災し、ガズィアンテップに在住のパートナー団体スタッフも避難を余儀なくされました。
当然のことながら、地震発生直後はパートナー団体との連絡も十分に取れず、取り急ぎ支援先の子どもたちやスタッフの安全を確認し、皆さまにお伝えしました。
地震発生から3日経った8日、ようやくパートナー団体のシリア人スタッフAnasさんと電話をすることができ、現地の状況を聞いた後、すぐに彼から生の声を届けてもらう場を設けることを決めました。
告知から1日も経たないうちでの緊急開催でしたが、80名もの方にお申込いただき、何とか最後まで現地のAnasさんとの通信も滞ることなく話を聞くことが出来ました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
以下、Anasさんへのインタビューの様子を抜粋してお伝えしていきます。
Anasさんは現在、家族と共にガズィアンテップより、イズミールに避難しています。地震が発生してから、どのように避難してイズミールに辿り着いたか、お話いただけますか?
「2月6日朝4時15分頃、寝ていると妻が叫んでいる声で飛び起き、揺れに気付きました。
身の着身のままで家の外に出ると、何百何千とも感じる大勢の人が同じように慌てふためいている異様な光景がありました。
その時は雪混じりの雨が降り、霧がかって十数メートル先が見えないような天候だったので、車の運転も困難な状況でした。
外に出た時は、建物が「踊っている」ように見えるほど揺れ、倒壊する恐れがあるので誰も中には入らず、女性も子どもも泣き叫び、しばらくは中庭で立ち尽くしていました。私自身も混乱していましたが、数時間経って冷静な頭を取り戻し、モスクへ避難しました。
モスクではあたたかいお茶、水、必要に応じて医薬品などが配布されました。そこに避難した人びとは1~2時間ほど暖をとることができました。しかし、こうしたモスクはすぐに混雑するのでまた外に出て、私は仕事の書類などが入った簡易バックを取りに一度家に戻りました。その時にはもう人びとは避難していて道には誰もおらず、その異様な光景を恐ろしく感じました。
それから、家族と共に他の場所へ避難するために空港へ向かうことを決めました。
しかし、公共交通機関は機能しておらず、タクシーもつかまらない状態でした。2時間かけて、高額な金額を支払いようやく車での移動手段を確保して空港に着くと、空港の利用は救助支援の目的のみに限られていました。
空港が使えなかったので、陸路で避難することにしました。高速バスの停留所まで行きましたが、市内から離れていて比較的安全な場所であるため、そこには既に多くの人が集まっていました。バスに乗ることはできましたが、余震の影響で道路がふさがり、バスが止まってしまいました。一度バスから降りて別のバスに乗り込むまで、路上で13時間待ちました。
ガズィアンテップから一時間かけてカフラマンマラシュという県境の検問所に着きましたが、そこでまた大きな地震が起き、バスは止まってしまいました。14~15時間、食べ物も水もないバスの中で再び待機することになりました。この時、地震発生から31時間が経過していました。
このように、2日かけてようやく妻の実家であるイズミールに辿り着くことが出来ました。
この道中、女性や子どもたちが泣き叫ぶ様子が、私たちをとても不安な気持ちにさせました。今回の地震では何千もの建物が崩壊しました。このような状況は、世界中の人びとにはなかなか信じてもらえないですが、何度も地震を経験し復興してきた日本の方々には、分かっていただけるんじゃないかと思います。」
シリア国内はどのような被害の状況ですか?
「地震の震源地はトルコですが、実際シリアの方が事態は深刻だと判断しています。特にシリア北西部が甚大な被害を受けています。(Piece of Syriaの支援地域)
なぜかというと、トルコは国自体が蓄えているリソースや海外からの支援があるので、復興する力があります。
一方、シリアも国が蓄えているリソースはありますが、国内が分断されている中でそれが均一に全国に分配されることは難しい状況です。特に北西部は、政治的な理由で、外からの地域が入ってこないため、まさに「ノーパワー」な状態にあります。普段この地域はトルコ政府からの支援を受けていますが、今はトルコも自国の対応で手いっぱいです。だからこそ今は、外からの支援:日本の皆さんからのご支援が必要です。力を合わせてご支援いただけますと嬉しいです。」
(支援先であるアレッポ郊外の幼稚園スタッフから届いた写真)
Piece of Syriaは、震源地に近いシリア北西部アレッポ郊外のSAKURA幼稚園を支援しています。幼稚園の様子はどうなっていますか?
「今SAKURA幼稚園は、地震の影響と悪天候を理由に閉園しています。
幼稚園の子どもたちの中には、一部連絡がとれていない家庭もあり、スタッフがメッセージを送り続けています。建物は、全壊はしていませんが、一部修復が必要な箇所はあります。幼稚園が再開した時に、状況が好転することを祈っています。」
(地震発生当日のSAKURA幼稚園の様子)
ここからは、参加者の皆さまからの質問にお答えしていきたいと思います。
今、子どもたちや先生方にとって一番大変なことはなんでしょうか?
「大変なことは主に二つあります。
一つ目は、子どもたちへの心理的な影響です。不安になっている子どもたちへ、閉園している中で心のケアができないのがとても辛い状況です。
二つ目には、普段から戦争状態である上に地震が起きたという、壊滅的な状況でも働いてくれている先生の暮らしです。今回の地震で、一人の先生の家が壊れてしまいましたが、避難ができず不安定な状況の中で働いてくれています。」
そのような暮らしの中で、夜はどのように過ごしていますか?
「トルコでは、政府がホテルや学校など、緊急避難場所を用意していますが、シリアでは路上で過ごしている人が多いです。建物から離れて過ごすことを意識して、テントや、農園、車の中で過ごしています。夜間はマイナス1~2℃まで冷え込みます。
ちなみに今、トルコ政府と一般市民が協力し、何とかシリアに支援を送ることができないかと模索しています。」
幼稚園や周辺住居の水道電気ガスなどの状況はどうですか?
「利用できない状況です。」
経済制裁がある中で海外からの支援は届いていますか?
「シリアの中でも地域によって状況が異なります。
シリア政権下では経済制裁があるので海外からの支援を届けるのは難しいが、SAKURA幼稚園の地域は政権下ではないため、トルコの銀行を経由して支援をすることが可能です。」
資金を送っても、現地に支援物資を届けることはできるのでしょうか?
「私たちの団体(Education without Borders)は10年以上シリアの支援を続けています。越冬支援も10年続けています。これらの経験から、地震の対応も行えるだけのキャパシティがあります。」
具体的にどれだけのお金で、どんなものを届けられるのでしょうか?
「地震の状況下で値上げが起こっているのでおおまかな金額になりますが、
200ドルあれば1家族分のテント、食糧、暖房器具を届けられます。
テントが1家族分125ドル、2週間分の食糧(1日2回の食事)が50ドルです。」
今回の地震ではクルディスタン地域も被害を受けていますが、そういった民族的・地域的な要素が届き方に差をもたらすことはあるのでしょうか?
「民族的な理由での支援の差は感じていません。しかし政治的要因では、経済制裁の影響があるのでシリア政権下の地域は、誰が支援を受け取る承認を行うかによって複雑な状況があります。」
SAKURA幼稚園の地域への物資支給は既に始まっているのでしょうか?
「Piece of Syriaの現地協力団体【Education without Borders】を通して、先生たちへのテントの支給は既に始まっています。ただ先生たち以外にもテントのニーズは高いので、随時多くの人びとが受け取れるように手配を進めていきたいです。」
(シリア国内の複雑な分断状況。地域によって状況が異なるので、一口に”シリアは~”と説明ができません)
Anasさんのお話が終わった後、ブレイクアウトルームに分かれてざっくばらんに意見交換をした交流会では、
「多くの地震を経験してきて、その大変さが最もイメージできる日本人だからこそ、共感を示していきたい」
「東日本大震災を思い出すような光景だった。あの時も地震をきっかけに、日本全国が団結したので、分断しているシリアもこれを機に良い方向へ進むきっかけになることを願いたい」
などの声があがりました。
緊急支援のクラウドファンディングを立ち上げて一日、既に多くのご支援をいただき、今回の地震への日本の皆さまの深い共感をひしひしと感じています。
本当にありがとうございます。集まったご支援は、トルコのパートナー団体を通して一刻も早くシリアへ送金し、必要な物資の購入に充てていきます。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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