6月20日は「世界難民の日」です。シリアでは、2011年にシリア危機が始まってから13年経った今も、世界各地・国内で避難をし、難民・避難民の状態が続くシリアの人々が、1,100万人以上います。難民となったシリア人が最も多く暮らすトルコでは、近年子どもたちの状況に変化が生まれていると、シリア支援団体「NPO法人Piece of Syria(大阪府 代表理事 中野貴行 以下、Piece of Syria)は訴えます。
■シリア危機から13年が経過し、変化する支援のニーズ
シリアは2011年から続く戦争によって人口の54%が難民・国内避難民として、故郷を去っており、うち300万人以上がトルコに在住しています。トルコで使われている言語はトルコ語で、シリアで使われるアラビア語と文字さえも異なるため、シリアから避難してきた子どもたちがトルコの学校での授業についていけませんでした。
そこで、当団体は、シリア人が多く住むトルコ南部の街ガズィアンティップで、トルコ語を学んだり、トルコ人との交流を行うために、学習のサポートを行う補習校の運営を2021年から始めました。毎年200名の子どもたちが学び、トルコの学校に通えるようになるという成果を生み出してきました。
そして、現在その補習校に、大きな変化が生まれています。その変化とは、補習校ではトルコ語だけではなく、アラビア語とシリアの文化を学ぶ授業が求められるようになったことです。
戦争から13年が経過し、トルコで生まれた子どもたちが増えています。テレビや授業でもトルコ語に触れる機会がほとんどで、家庭以外でアラビア語に触れる機会がほぼありません。そのため、家族とアラビア語で会話はできても、体系的に学ぶ機会がないために、読み書きができない子どもたちも増えています。
さらに、そうした子どもたちは、母国シリアに足を踏み入れたことがないために、シリアへの愛着を持つことは難しく、シリアで生まれ育った保護者や先生たちが危惧をしています。
と、同時に文化そのものも、戦争によって破壊・喪失が進んでいます。世界遺産のパルミラ遺跡の神殿の一部が、ISに破壊されたことに、私たちは大きなショックを受けました。
加えて、難民・国内避難民という形で、土地を離れざるを得なかったため、その土地で代々受け継がれてきた無形遺産、口承文化もまた、失われつつあります。例えば、シリアのマアルーラという村には、イエスキリストが話したアラム語を今も受け継ぐ人たちが住んでいたのですが、襲撃を受けて避難した後、ISが去った今も多くの村人が戻ることができていません。
戦争は「積み重ねてきた文化や歴史」も破壊していくのです。
■Piece of Syriaの取り組み
私たちPiece of Syriaは、緊急性・優先度が低いと見なされがちである教育支援を「平和の担い手を育てるための緊急支援」と考え、現地のニーズに柔軟に寄り添いながら、継続的な支援を実施しています。長期化する戦争のため、求められる支援のあり方も変化しています。
シリアから避難した方が最も多く住むトルコで、私たちが運営している補習校の事例を紹介します。当初、家庭内で使われる母国語のアラビア語とは異なり、トルコ語で行われる授業についていくことが困難なため、トルコ語・英語・算数を学ぶ補習授業が求められていました。しかし、長期化する戦争の影響により、今やトルコ生まれの母国を知らない子どもたちが多くなり、理数科の補習に加えて、アラビア語の授業やシリアの文化を学ぶことが最も求められるようになりました。
現在までに、シリア北部の幼稚園の継続的な運営、トルコ南部のシリア難民向けの補習校に加えて、地震復興支援として、約250名が通う小学校の校舎2校の修復、修復が完了した小学校54校への越冬支援(約30,000人の小学生が対象)、長引く戦争と地震による子どもや保護者のトラウマに対する心のケアセンターの運営(約1,000人が対象)を進めています。
こうした私たちの活動は、皆さまからのご寄付によって支えられています。
■「平和なシリアの担い手を支える教育支援」実施のため、パートナー会員(マンスリーサポーター)を募集しています
■「平和なシリアの担い手を支える教育支援」実施のため、パートナー会員(マンスリーサポーター)を募集しています
当団体へお寄せいただくご支援で、子どもたちが基礎教育を受け、自らの力で国を復興し、平和を創る人材になるために、私たちは教育を、そして希望を届け続けることができます。
詳しくは、パートナー会員募集特設ページをご覧ください。
■6月23日(日)開催・オンライン活動報告会のご案内
支援地の状況を伝えるため、オンラインの活動報告会を実施します。今回は、事業地であるトルコと生中継でつなぎ、皆さまのご寄付によって運営している補習校の様子をお届けします。現地の子どもたちの状況や現在の新たな課題についてもお話します。
参加者の方からのご質問を受け付ける時間も設けておりますので、ぜひご参加ください。
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